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「さまざまな分野の先生と学生がつくり上げる、メディア学部発のチャリティー音楽イベントを実現!」

メディア学部 吉岡英樹 講師

メディア学部 吉岡英樹 講師

吉岡先生が主導する、アーティスト支援に取り組むプロジェクト演習「TUT MUSIC SUPPORT」。その活動の一環で行われてきたチャリティーライブイベント「MUSIC FOR THE FUTURE」が、今年、規模を拡大して開催されることに。今回はその詳細と、今後のプロジェクトの展開について伺いました。

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「MUSIC FOR THE FUTURE vol.3」

■11月26日にチャリティー音楽イベント「MUSIC FOR THE FUTURE vol.3」が開催されますが、これは具体的にどういうイベントなのでしょうか?

「MUSIC FOR THE FUTURE」の、そもそものコンセプトは、文字通り“将来につなげるための音楽イベント”というものです。3回目を迎える今回は、目的を東日本大震災の被災地支援に設定し、ここ八王子キャンパスで無料コンサートを開いて、会場で募金活動を行います。集まった募金は、音楽家?坂本龍一さんが中心となっている復興支援プロジェクトの基金「こどもの音楽再生基金」を通じて、被災地にある学校への楽器関連の復興支援に使われることになります。

■寄付先を「こどもの音楽再生基金」に決めた経緯とは何だったのですか?

ずっと音楽をしてきて、大学でも音楽にまつわる教育をしている身として、あの震災の後、すごく無力感を感じたんです。何もできないと思ったし、それどころじゃないなとも思いました。だけど、何かしなくてはという思いは、当然あって。それと今年の「MUSIC FOR THE FUTURE」は、どうするのかということも考えなければならなかった。そんなとき、たまたま「こどもの音楽再生基金」が立ち上がったことをラジオで知って、「これだ!」と決めたんです。坂本龍一さんが中心になっている割には、まだ規模がそれほど大きくなっていなかったので、これから何か一緒にできることを探していけるのではないかと思ったのも決め手です。また、今回は被災地支援ということから、いろいろな方の協力が得られることになり、規模や運営においても、これまでとはかなり違ったイベントになっています。

被災したオルガンと「こどもの音楽再生基金」による楽器修理

■具体的には、どういう点がこれまでと違うのでしょうか?

ひとつは、会場の違いがあります。過去2回の「MUSIC FOR THE FUTURE」は、東京都内のライブハウスを借りて開催しましたが、今回は八王子キャンパスの片柳記念ホールで開催します。それというのも、学外では当然、場所を借りる費用がかかりますよね。これまで、その費用は大学の研究費から負担していて、チケットの売上の一部を寄付する形だったのですが、そういう開催のスタイルにどうも違和感があったんです。この八王子キャンパスにはホールがありますし、さまざまな機材も揃っています。さらにキャンパス内には、日本工学院ミュージックカレッジという専門学校があり、人材も機材もあります。考えてみると、大学の財産ともいえるこの環境を、もっと活かした方が良いのではないかと思ったんです。特にチャリティーを目的とするなら、活用できるものは活用したほうが目的に適っていますよね。ですから今回は学内で、しかも専門学校と協力しながら開催するということは、早い段階で決めていました。
また、過去2回は、2008年にスタートしたメディア学部のプロジェクト演習「TUT MUSIC SUPPORT」(以下TMS)が主催するイベントでしたが、今回はメディア学部が主催します。TMSというのは、“これから”という才能あるアーティストの音楽を、一人でも多くの人に聴いてもらえるように支援することを目的としたプロジェクトです。学生が支援アーティストのライブイベントの企画やCD制作、プロモーション、マーケティングなどに取り組むことで、音楽産業の仕組みや実践的なことを学び、学生自身の将来につなげてもらうという狙いも併せ持ったプロジェクトになっています。その中のイベントとして「MUSIC FOR THE FUTURE」を開催してきたのですが、今回は、いろいろな方にイベントの話をしていくうちに企画が大きくなって、TMSが主催するには難しいほどの規模になったんですね。例えば、これまでより広い会場を使うので、より多くの観客を動員するためのプロモーション活動に、一層の力を注ぐ必要があります。また、無料コンサートですから、非常にたくさんの人が来てくださると予想できます。そういうことからメディア学部で主催し、さまざまな分野の先生方や学生に協力いただく形で進めることになりました。

■学生はどういう形で、今回のイベントに関わるのでしょうか?

TMSの学生は、今までどおり、アーティスト支援を担当します。TMSで支援してきたアーティストが、今回のイベントにも出演するので、彼らのケアをしたり物販をしたりという部分です。また、今回はチャリティーに重きを置いているので、それに関する企画を学生に考えてもらっています。例えば、あるチャリティーイベントで、ジュースを飲むと、そこからいくらか寄付されるという企画があったのですが、そんなふうに何か企業と連携して、企業プロモーションになることを提供しながら、お金に替えることができないかと考えています。この部分は、メディア学部の飯沼瑞穂先生にご協力いただいて、検討を進めているところです。また、メディア学部ですから、Facebookやtwitterなどのソーシャルメディアをどう取り入れて、活用するかを検討する人たちもいます。さらに、八王子の地域とどう連携を取るかということについても、授業の一環としてプロジェクトを立ち上げ、学生が取り組んでくれています。
また、過去2回はコンサートの模様をUstreamで生中継したのですが、今回はそれに加えて、イベント紹介番組も事前に配信しています。その部分でもチームを組んでいて、佐々木和郎先生の協力を得ながら、学内のインターネット放送局intebroと連携を取ったり、Ustreamの研究をしている大学院生をディレクターにして、番組構成や機材周り、配信方法を検討したりしてもらっています。また、別の大学院生には、会場にいる人とUstreamを観ている人をつなぐコンテンツ制作をお願いしています。他にも本学部の1年生で、すでに放送作家としてテレビ局に出入りしている学生に、Ustreamで配信したイベント紹介番組の台本を書いてもらいました。専門学校には、音響や照明、観客の誘導といった、コンサート当日の運営を担当してもらいます。専門学校でも、授業の一環として今回のイベントに取り組むので、多くの学生が関わることになります。

■では最後に、今後のプロジェクトやイベントの展開をお聞かせください。

被災地支援としては、今回のイベントだけで終わるのではなく、長期的に活動を続けていくつもりでいます。TMSについては、実は今後、あえて縮小させる方向で考えています。このプロジェクト演習がスタートして3年になりますが、音楽イベントは年々大きくなり、多くの方から認知されるようになってきました。それと同時に、TMSで支援してきたアーティストのダイスケくんが、すごくがんばってくれていて、メジャーデビューして有名になってくれて、本当に良かったなと思っています。また、他大学との連携が少しずつ築けてきているところにも手ごたえを感じています。その一方で、音楽イベントの企画運営をしたり、アーティスト支援をしたりすることで、学生にそのノウハウやビジネス要素を学んでほしいという、立ち上げ当初からのプロジェクトの主旨を、達成できていない部分もあるんです。というのも、実際に音楽イベントを始めると、その運営で忙しくなり、学生は作業に追われてしまいます。そこで来年からは、TMSを大きく変えるつもりです。来年度、メディア学部のコースが新しくなります。そのひとつに「メディアビジネスコース」ができるので、そこでマーケティングなどTMSにつながるような基礎知識をしっかり教えて、それを積み重ねた上で人選して、TMSに参加してもらうようにしようと考えています。1年生には、私が担当する「音楽産業論」という授業を受けてもらい、そこで良い成績を修めた学生が次のステップへ進める形にしようと思っています。次のステップというのは、2年生のプロジェクト演習で、既存のアーティストのプロモーション方法や、どういう人をターゲットにしたCDが制作されているかなどを分析する演習になります。そのように段階を経て、ノウハウを培った学生にTMSへ参加ししてもらい、アーティストに対する実践的なサポートに取り組んでもらう形にする予定です。
[2011年10月取材]

?次回は12月9日に配信予定です。

2011年11月11日掲出