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意欲ある学生がどんどんチャレンジできる、面白いプログラムが始まっています!

2022年3月25日掲出

コンピュータサイエンス学部 先進情報専攻 生野 壮一郎 教授

メディア学部 メディアコンテンツコース 川島 基展 特任講師

東京工科大学では、革新的かつ実践的な教育活動の一環として、2021年度より各学部?学環における「戦略的教育プログラム」(第二期目)を進めています。今回はコンピュータサイエンス学部での取り組みについて、生野先生にお聞きしました。

■コンピュータサイエンス学部が進めている戦略的教育プログラム「産学連携クラウド学修を通じた新しい実学教育プログラム」についてお聞かせください。

 概要としては、意欲の高い学生にモチベーションを維持してもらうべく、大学の通常カリキュラムでは学べないようなことに取り組むプログラムを用意して、実施していくというものです。一般論ですが、大学学部のカリキュラムはカリキュラム?ポリシー(教育課程編成?実施の方針)やディプロマ?ポリシー(卒業認定?学位授与の方針)に従い構成されています。そのため、4年間で学べることには限りがあります。しかし、コンピュータサイエンス学部(以下、CS学部)では、それに加えて、学生たちがさらに高い目標にチャレンジできる環境をつくることと、その目標を維持できるような活動をサポートすることも必要だと考えています。ほとんどの学生は入学時に大きな夢と希望を持って入学してきます。その学生たちが持っている高いモチベーションを在学中継続して保ちつつ、ワンランク、ツーランク上の将来を見据えた活動をしてもらえるようにしようというのが、今回のプログラムのひとつの目標です。  

■具体的にはどのようなことに取り組むのですか?

 CS学部には、人工知能専攻と先進情報専攻の二つがあるので、各専攻の教員が中心となってサークルやラボ、道場のようなものを立ち上げ、そこに学生が有志で参加するという形をとっています。
 ひとつは、四足歩行ロボットを扱うラボ。Unitree A1(https://www.unitree.com/products/a1/)という四足歩行ロボットを用いて、その視覚情報や動作情報をAIと組み合わせ、障害物に当たらないように自動歩行させようという取り組みです。これは人工知能専攻の服部聖彦教授が監督します。四足歩行ロボットは高価な機器ですし、通常のカリキュラムではなかなか触れる機会がありませんから、そういうものを使えるということがポイントになります。
 また、「Kaggle(カグル)」などのコンペティションに参加しまくろうというラボもあります。これは人工知能専攻の青木輝勝教授が担当です。「Kaggle」とは、データサイエンスや機械学習に関わる世界中の人々が集まるオンラインコミュニティで、プロのデータサイエンティストと機械学習エンジニアをつなげるプラットフォームになっています。その最大の特長がコンペティションで、企業や政府が出した課題に対して、最も精度の高い分析モデルを開発すれば、それを賞金と引き換えに買い取ってもらえるという仕組みです。コンペティション上位者にはメダルが授与され、その獲得メダル数によってグランドマスター、マスター、エキスパートなどの称号が得られます。ちなみに、グランドマスターの称号を持つ方は世界でも250名程度しかおらず、非常に狭き門になっています。もちろん、グランドマスターまでいかなくても、コンペティションの上位に入るだけでも人工知能のエンジニアやデータサイエンティストとしての栄誉になります。
 この「Kaggle」の良い点は、とにかく誰でも参加できるということです。そして、参加すれば最終的に順位が出ます。つまり、学生は自分が世界的にどのくらいのポジションなのかを知ることができるのです。それがモチベーションとなり、自分に足りていない部分を考え、大学でこの勉強をしておこうとか、コンピュータのここを知らないといけなかったのだと気づき、人工知能とは何なのかという核の部分にまで触れたい、学びたいというモチベーションになるのではないかと期待しています。

 それから先進情報専攻の方では、クラウド道場というものがあります。これは串田高幸教授が担当教員で、すでに2回ほど開催されています。私たちの世界は今、クラウドコンピューティングなしでは、ほぼ成り立ちません。AmazonもZoomもメールサービスもそうです。基本的には、クラウドの技術なくしては、サービスの提供も享受もできないのです。それほどクラウドを使うということは一般的なのですが、では、クラウドをつくるということについてはどうだろうかと。つまり私たちは、一般的にクラウドをエンドユーザーとして使っているわけですが、そういうクラウドを使ってもらうために、そのサービスの提供はどのようにするのか?といったことを入門的なところから実践部分まで学んでいきます。
 また、そこに関連して、システム開発の道場も立ち上がっています。これは企業のシステム開発の第一線で活躍されてきた細野繁准教授が担当します。ここでは、顧客に対してどんなサービスに価値があるのかを考えて提供する場合、どういう段階を踏んでシステム開発をしなければならないのか、そのノウハウを細野先生が教え、サポートしながら、学生に体験してもらうということをしています。これはクラウド上に、例えば学会のシステムや出席システムをつくる、あるいはスマートフォンのアプリをつくるという部分の話です。
 そして、私がHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)道場を担当します。この道場は、学外のスーパーコンピュータを使って、とにかく早く計算することを目的としています。スーパーコンピュータは国のプロジェクトなので、学際的な研究に対して開かれていて、どんどん使える仕組みになっています。ですから申請すれば、費用はかかりますが使わせてもらえるのです。それを使って、色々な計算をしてみようという道場になります。スーパーコンピュータは、国内の研究者たちが使っているものですから、コンピュータリテラシーが十分でない学生が使うと、トラブルに対応できないといった迷惑をかけるかもしれません。しかし、今回の戦略的教育プログラムのような少人数で集中的に教育できる場合は、スーパーコンピュータを扱えるリテラシー教育が十分にできるだろうと考えています。
 このような形で、今後、いくつものラボや道場を立ち上げていく予定です。そこでは専門的なことや社会とのつながりが密接にある部分を扱っていきます。やはり大学も社会とのつながりを密に持ち、その経験を培った学生たちを輩出していかなければなりませんから。

■ラボや道場での成果は、どのような形で発表していくのでしょうか。

 ひとつは、オープンソースとして公開します。もうひとつは、研究成果の学会発表。それからビジネスに結びつけて、起業するという3つのアウトプットで、社会とつながっていくことを考えています。例えば、CS学部では、「スタートアップウィークエンド」という起業体験イベントを実施していて、今後も継続していく予定です。それによってビジネスの視点を養い、社会に向けてアウトプットしていくことの重要性を体験してもらいたいと考えています。
  社会とのつながりで言えば、第一線で活躍している技術者やOB?OGを招致して、学生に実践的な体験をしてもらうことも計画しています。もともとCS学部では、1年生後期にゲストスピーカーを招いての講演会を実施しています。過去には、Yahoo!JAPAN研究所の所長やIBMのトーマス?J?ワトソン研究所の研究員の方に講演をしてもらいました。そういう現場で活躍している技術者やOB?OGをこの戦略的教育プログラムでも招いて、学生が「こういうものをつくりたい」といったときに、それにはどんな知識や技術が必要で、どんな勉強が必要なのかということを、実体験を含めて、集中的にレクチャーしてもらう場を設けたいと考えています。それは講義のような堅苦しいものではなく、ワークショップのような軽い感じでできたらとイメージしています。
 あとは、オープンバッジとの連携を考えています。オープンバッジとは、社内や学内で「あなたはこのスキルを持っています」というバッジ認定をしてあげる制度のことです。資格や証明書、認定よりは軽いものですが、CS学部の戦略的教育プログラムの各取り組みと連携させて、学生にどんどん取得してもらい、就職活動などで活用してもらおうと考えています。例えば、先進情報専攻の「クラウド道場」でバッジ認定をして、クラウド入門バッジやクラウド応用技術スキルバッジといったデジタルバッジをどんどん出し、そのバッジをウェブ上でクリックすると、それを持っている人は何ができるのかが具体的に示されるというものです。つまり、その学生がどういうスキルを持っているのかを、学部として証明してあげるわけです。また、学外の人もそのバッジがどんなスキルを証明するものかを、確認することができます。そういうことも社会とのつながりをつくるひとつだと言えます。

■学生の募集は、どのように行うのですか?

 学内向けに戦略的教育プログラムのホームページを立ち上げました。そこにラボ(道場)の窓をつくっておいて、参加したい人はいつでもそこから参加表明できるというものを用意しています。先ほどお話ししたように、プロジェクトのテーマやタイトルはある程度、こちら側で準備しているので、そこから興味のあるものに参加してもらう方法もありますし、もちろんその枠外でしたいことがある学生はそれを書いて申請できる形にしようと考えています。   

■今後の計画や展望についてお聞かせください。

 このプログラムに参加した学生たちにはモチベーションを保って、大学院に進学してもらい、さらには技術者?研究者としての道を歩んでもらいたいということが大きな目標としてあります。このプログラムへの参加を機に、さらに上の目標設定をして、そこに向けた活動をし、達成してもらいたいということです。私たちCS学部の教員は、その手助けをいくらでもするつもりでいます。
 ですから、この戦略的教育プログラムに参加した学生たちが、その後、どういう企業でどういうポジションに就いたか、大学院に進学したのか、研究職に就いたのかというところは、きちんとトレースして、最終的なこのプログラムの効果や影響について検証したいと思っています。その結果、うまくいったと言えるのであれば、次期の戦略的教育プログラムに申請するか、あるいは学部としてこの取り組みを継続して支援していきたいと考えています。
 また、CS学部の学生の中には、業界的にもトップクラスのスーパープログラマーがたくさんいます。ただ、自分自身にそういう強みがあることを自覚していない学生もいるため、そういうところの意識改革もこのプログラムを通して行っていけたらと思っています。

■最後に受験生?高校生へのメッセージをお願いします。

 ここ2年、コロナ禍が続いています。何事もそうですが、こういう状況のときに、技術や科学は急加速で進歩します。例えば、今回、創薬分野でメッセンジャーRNAが有名になりましたよね。もともとRNAの研究はDNAの研究の陰にかくれて行われていたもので、メインストリームではありませんでした。それが一気に技術革新し、日の目を見たわけです。今、私たちが使っているZoomなどのオンライン会議ツールやインターネット、クラウド技術などについても、私たちはこの2年間で技術革新を目の当たりにしています。2年前、オンラインツールを使って、ここまでスムーズにオンライン会議やオンライン講義ができたでしょうか?それがこの2年で普通にできるようになったわけです。
 今後、さらなる技術革新が期待されていますが、一方でそれを担う人材の不足は否めません。このコロナ禍が明けて、ニューノーマルになったときに必要となるものや技術を考えて、それを次のステップに持っていくには、若い人たちの思考が絶対に必要になってきます。そういう部分を皆さんと一緒に開発できたらうれしいですし、大学でそういう研究に取り組んでもらい、ぜひその分野の次の担い手になってもらいたいです。
 こういう世の中だからこそ、できることがあります。何が必要で何ができるのか、次の新しい技術は何かということを考えると、きっとワクワクして面白いはずですよ。
■コンピュータサイエンス学部 先進情報専攻WEB:
/gakubu/cs/006335.html