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これからの看護師は、地域や在宅における看護の視点を持つことが不可欠です!

2018年5月17日掲出

医療保健学部 看護学科 大木正隆 准教授

大木正隆准教授

 病院という非日常に対して、日常生活の中に看護がある“在宅看護”に関心を持ち、実践と研究を重ねてきた大木先生。今回はご研究の話や病院の看護師と訪問看護師の違いについてお聞きしました。

■先生のご研究について、お聞かせください。

  私は「地域包括ケアシステム」における看護職、特に訪問看護師の役割について研究しています。訪問看護師とは、病院ではなく療養者の自宅や入所施設などを訪れて、その方が疾患とうまく付き合いながら日常を少しでも充実して過ごせるように支援する看護師のことです。また、「地域包括ケアシステム」とは、厚生労働省によると「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい?医療?介護?予防?生活支援が一体的に提供される自治体ベースの取り組み」と説明されています。
 この中でキーワードとなるのが“75歳”です。というのも65歳以上75歳未満で介護保険サービスを受けている人は数パーセントに過ぎませんが、75歳になると途端にその利用率は増えるのです。人口の多い団塊の世代が75歳になったとき、地域の医療や介護の担い手がきちんと整備されていないと、パンクしてしまうかもしれません。また、国としては年々増える医療費をいかに減らすかということも大きな課題としています。ですから国は「時々入院ほぼ在宅」というスローガンで、病院はあくまでも治療の場とし、回復や維持といった療養の場は地域で担うことを徹底しようとしています。つまり、在院日数を短くして、できるだけ在宅医療にもっていこうと進めているわけです。ですから今後、在宅医療や訪問看護のニーズは、ますます高まってきています。
 このように病院から地域(在宅)へと患者さんの医療拠点を移す場合、大切になってくるのが、病院で働く看護師による退院支援と、退院後の患者さんの受け手となる訪問看護師など地域と病院の連携です。そこで私は、病院から在宅に帰る患者さんに対して、訪問看護師が病院の看護師からどういう医療?看護情報をもらえば、スムーズに連携でき、早期に療養者やその家族が安定するかということを研究しました。実際の現場では、看護サマリーという患者情報を要約した書類を作成して退院後の受け入れ先に渡すのですが、病院によってその形式はさまざまですし、中には退院して1週間後に届くケースもあるなど、課題がありました。この研究は2000年頃に行ったものですが、最近では看護サマリーの形式も整いつつあります。また逆に訪問看護ステーションから病院への看護サマリーに今年4月の診療報酬改定では、ようやく報酬がつくようになったので、この研究が少しは影響を与えられたのではないかと感じています。

■訪問看護師と病院の看護師には、どのような違いがあるのでしょうか?

 訪問看護は基本、一人で訪問するので、現場に先輩や医師がいない分、どうしても経験が求められます。また、在宅での看護は、療養者本人と家族をひとつの単位として見るので、療養者のケアだけでなく、その家族とも色々と情報交換しなければなりません。一軒一軒のお宅の療養者と家族の状態に合わせて、どんなサービスをどこまで行うか、経済的な負担も含めて、ケアマネジャーや医師と常に相談しながら関わっていく仕事ですから、まさにオーダーメイドの看護と言えます。ですから私は、病院以上にチーム医療だと実感しています。また、非常に高度なことを求められる現場ですが、同時に充実感や達成感を得られる仕事でもあります。療養者さんが病院では見せないような笑顔を見せてくれるのも、在宅医療ならではのやりがいですよ。
 それから病院と違って、対象が小児、成人、高齢者、すべての年齢、病状の方になります。もちろん看護師それぞれに専門や得意分野はありますが、経験が少ない分野は、地域にある訪問看護ステーションの中で、その分野の経験豊富な看護師に同行して学ぶなど、看護師同士で補い合いながら進めていくこともあります。また、これまでは病院で経験を積んでから訪問看護師へという流れが主流でしたが、最近、規模の大きい訪問看護ステーションでは新卒を採用するところも出てきています。

■教員として大切にしていることを教えてください。

 教員の仕事は、私の趣味である園芸と重なる部分が多々あります。学生が大切な“種”であれば、教員は“土”です。土壌がしっかりしていないと、植物は芽を出しません。学生も同じです。ですから私たち教員も現場で経験を積みながら研鑚していかなければならないと思っています。実際、私は大学業務に差し支えない範囲で、今も訪問看護の実践を継続しています。それによって学生に“生きた言葉”で事例を伝えることを大切にしているのです。
 また、大学で学んだ在宅看護やその実習経験は、将来、病院勤めの看護師になったときにも必ず役立ちます。というのも在宅の視点は、退院支援に非常に役立つからです。今までの病院の看護師は、目の前の看護が仕事の中心だったかもしれませんが、これからは患者さんの入院前の生活に思いを馳せ、治療中には治療に対する看護をし、退院後はどういう環境に戻り、どういう看護指導が必要かを考えるという一連の過程を見据えてはじめて、その役割が完結するようになります。ですからどこで働く看護師でも、地域や在宅における看護の視点を持ち続けてほしいと、学生に伝えています。

■受験生?高校生にメッセージをお願いします。

 看護は何よりコミュニケーション能力が必要な仕事です。すべては患者さんとのやり取りから始まるので、人と話す力はぜひとも持っていてください。また看護には、練習すれば身につく技術的なものがある一方で、目に見えない大切なものもあります。それを学ぶには、物事に対する感謝の気持ちや謙虚な心が欠かせません。看護は医療的なケアを提供する、与えるものの多い仕事だと思われがちですが、実際は患者さんやそのご家族の人生や考え方に触れて教わる事も多々ある、いただくことの多い仕事です。感謝の心と謙虚さを持って自分を振り返り、学んだことを糧に成長していける職業なのです。みなさんも看護を通じて、一緒に成長していきましょう!

■医療保健学部 看護学科WEB:
/gakubu/medical/ns/index.html

?次回配信は6月1日を予定してます。