[2012年度]第11回「学生時代の恩師の教えから導いた、実学主義で一番大切なこと。問題を発見でき、新しい発想ができる社会人になるために。」
皆さん、こんにちは。今回は、今年度前半にお話しました、教養スタンダードの3要素「国際的な教養」「批判的に物事を見る能力」「創造力」から、一番大切な「批判的に物事を見る能力」について、先般のアメリカ視察でのエピソードも交えてお話しましょう。
私は大学時代、担当教授に「フォロアーになるな!」とよく言われていました。
たとえば、私が「このような研究がやりたい」と相談すると、教授に「そんなものはナンセンスだ!」と、その理由を次々にあげて反対され、私は何も言えなくなってしまいました。そうすると、教授は怒って、「私に言われたからって黙ってしまってどうする。こういうときこそ、“だがしかし???”と反論できなければダメだ!」と教えられたものです。
これは、つまり、「人の後につくな、人の真似はするな!」という意味が込められていたのだと思います。本来、科学者とはそういうものなのです。ですから、物事を素直に受け取るだけでなく、常に批判的に見る力が大切なのです。
さらに、その教授からは「アイデアというのは出し癖が大事だ」ということも言われました。つまり、最初はつまらないアイデアでも、次々にアイデアを出していけば、次第によいアイデアが出せるようになってくるということを伝えたかったのです。このように批判的に物事を見る力を養うことによって“新しいことを発想する”習慣が生まれるのだと思います。
昨年9月のアメリカ視察の際、ある大学で「サステイナビリティ(地球環境保護の観点から、持続可能な社会や自然環境をめざす)」を題材にしたゲームを行っていました。これは、批判的に物事を見る力を養うのに非常にいいテーマだと思いました。
ゲームの様子を見ていると、学生たち一人ひとりが「私はアパートメントに住んでいます。今朝6時に起きました。朝食にはこれを食べて、カロリーはこのくらいでした。そして、大学までの交通手段(徒歩or自転車or電車)はこれで、このくらいのエネルギーを消費しました」というように1日の生活に必要なエネルギー計算などをして自分の生活をきちんと分析していました。そしてその事により、どうすれば、環境にやさしい生活ができるかを話し合っていました。
そこで皆さんも、この「サステイナビリティ」の考えをもとに、次の問題に挑戦してみてください。
Q.次の3つのうち、将来の発電として有望なのはどれだと思いますか?
1.重油を燃料とした発電
2.石炭を燃料とした発電
3.風力でつくった発電
A.正解は2です。
地球環境などを考えて風力と答える人は多いですが、日本中に風車をつくってしまったら、風車から出る低周波音で騒音問題になってしまいます。かといって、海上につくれば、台風で吹き飛んでしまいます。日本中で風力発電、さらに太陽光発電を行ったとしても、全体の50%も賄えないことが予想されています。さらに、石油にいたっては、あと30年で尽きてしまうと言われています。
一方、石炭は少なくとも、あと200年はもつと予想され、重油と同じくらいに効率的に発電できます。ただ、石炭を燃やすことで発生する硫黄酸化物や窒素酸化物を取り除くためにコストが発生しますが、それを含めても重油に比べると安く済むわけです。
エネルギー問題ひとつとっても取り巻く諸問題はたくさんあります。このようなことは、相当調べ、研究しないと分からないものです。そして最終的には、一見理想的と思われた解決策についても、問題点が明らかになって来たりもします。これからも東京工科大学は、実学主義で、問題を発見でき、新しい発想ができる社会人を育てていきます。
皆さん、1年間のご購読、ありがとうございました。4月にキャンパスでお会いしましょう!