2023年工学部長メッセージ
「努力すること」 山下 俊
受験生のみなさん、こんにちは。
皆さんはいま受験勉強に全力を注いでいることと思います。寝食も忘れるほどに何かに集中して取り組む経験をすることは、みなさんがこれからの人生において遭遇する様々な困難や解決すべき問題に立ち向かう上で大きな力となります。また、皆さんの現在の学びは大学で先端科学を学ぶための基礎となります。ぜひ頑張って最後の仕上げに挑戦してください。
天才とは、1%のひらめきと99%の努力である。(トーマス エジソン)
チャンスは、心の準備のできている人に訪れる。(ルイ パスツール)
失敗したことのない人間というのは、挑戦をしたことのない人間である。(アルベルト アインシュタイン)
科学史の中で偉業を達成した先人はいくつもの「名言」を残しています。これらの成功者、天才と呼ばれる人たちはその成功の一面のみがクローズアップされがちですが、成功者がもともと卓越した能力を持っていたとか、単なる幸運であったというわけではなく、偉業の達成に至る過程にはたゆまざる努力があったことが読み取れるでしょう。
工学の学びは、自然科学の知識を利用して、世の中の誰も知らなかった新しい技術やそれに伴う新しい価値を創造する力を養うことにあります。これまでの学習のように課題を与えられそれに答えるのではなく、何をすればよいのか、どうすればよいのか、答えのない問題に取り組み、あるいはその課題自体を自らが見出さなければなりません。研究における試行のほとんどは失敗であり、その失敗の中からどうすればそれを克服し問題解決できるのか、手探りで成功に導くための方法論を学ぶことが大学での学びの究極の目標です。
そのような観点で、私は「努力すること」が工学を志す人にはもちろんのこと、すべての人に重要なことだと思います。優れた結果を得ることが重要なのではなく、優れた結果を得ようと真剣に取り組む経験をすることが人にとっての価値だと思います。
近年、価値の多様化という言葉をよく耳にするようになりました。新たな社会や生活様式に向けた新しいコンセプトは未来を切り拓く大きな力となると思いますが、一方、私たちがものの価値を創造する仕事に携わる上で、アプリオリにそうあるべきこと、そうしなければならないことがあるのも事実です。研究や学びにおける努力は決して他から強制されるものではなく、自らの内なる好奇心や情熱に由来するものであるがゆえに、我々はその失敗や苦労を楽しみ、享受することができるわけです。みなさんが受験勉強の手を休めお茶を飲みながらほっと一息つく際に、自分は未来にむけてどのような夢を描いているのか、思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
それを想うこと屡々にして、かつ、長ければ長いほど、常に新たにして増しきたる感慨と崇敬の念をもって心を満たすものが2つある。それはわが上なる星煌めく夜空と、わが内なる道徳律である。 (イマヌエル カント、実践理性批判より)
工学部長 山下俊
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