先端情報の入手や国際交流に必要な英語力を身に付けて、リハビリ分野で活躍するリーダーになろう!
医療保健学部 リハビリテーション学科長 中山 孝 教授
東京工科大学では、革新的かつ実践的な教育活動の一環として、今年4月より各学部?学環における「戦略的教育プログラム」(第二期)が始まりました。今回は医療保健学部リハビリテーション学科での取り組みについて、理学療法学専攻の中山先生にお聞きしました。
■医療保健学部リハビリテーション学科で進めている「戦略的教育プログラム」について教えてください。
現在、リハビリテーション学科では、「リハビリテーション専門職リーダーを育成する研究?研修英語教育プログラム」に取り組んでいます。リハビリテーション学科には理学療法学専攻、作業療法学専攻、言語聴覚学専攻の3専攻がありますが、それぞれ取り組む内容は少しずつ異なっています。
理学療法学専攻に関しては、第一期の「戦略的教育プログラム」(2017年度~2020年度)で取り組んだ内容の一部を踏襲しつつ、今回はなるべく多くの学生が参加できる形で実施しています。対象学年は2、3年生ですが、メインは2年生です。また、最終ゴールは、英語の能力やコミュニケーション能力を高め、その過程で社会性も身に付けながら、リハビリテーションの先進国であるオーストラリアでの短期留学を経験し、将来、この分野で活躍するリーダーを育成することとしています。研修先としては、南オーストラリア大学に加え、本専攻の斎藤寛樹助教の出身校であるカーティン大学とも連携していく予定です。さらに今回から新たに、在学中に英語で論文を執筆?投稿することや、国際学会で発表することも計画しています。
新しい取り組みとして、英語で書かれた1000ページに及ぶ理学療法の教科書を用いた授業を始めました。第一期では、プログラムに参加した学生は英語の理学療法コンテンツを英語のまま理解しようと取り組んだのですが、今回はさらに英語の基礎学力を全学生が身に付けられるようにと、今の2年生から英語で書かれた教科書での授業を行っています。この教科書を2年生、3年生でフル活用していく予定です。というのも、英語や英語での専門用語を学習する機会がないと、オーストラリアでの研修で困りますからね。
さらに新しい試みとしては、5月の連休明けから「イングリッシュセントラル」というオンライン英語学習サービスを利用して、日常英会話を毎日トレーニングするというプログラムを始めています。このプログラムの受講を希望した学生は、「イングリッシュセントラル」のオンライン学習環境にログインして、4か月間、毎日25分間、英会話を学びます。そこには様々な英語のコンテンツがあり、動画で英語を勉強することも可能です。これまでは、東京在住の理学療法士でネイティブスピーカーに、英語で理学療法を講義?演習して頂いたのですが、コロナ禍で対面授業ができなくなったため、その代替として、今回、この新たなプログラムを用意しました。
それからもうひとつの試みとしては、英語力がどの程度向上したか確認するため、TOEFLやTOEIC、英検よりも手軽に英語のテストをウェブ上で受けられるCASEC(キャセック)を学生に受けてもらっています。短い試験時間で、語彙力や文章理解力、ヒアリング、リスニング力をテストするというものです。それを使って定期的に学生の英語力を評価し、その結果が良い人たちには最終的にオーストラリアで研修してもらう予定です。
今後の計画では、2、3年生を対象に、アメリカ在住の日系二世やオーストラリア在住の理学療法士に特別講義をしてもらうなど、遠隔授業でも多くの学生が英語で理学療法を学ぶ機会を設けようと考えています。
■では、作業療法学専攻と言語聴覚学専攻では、どのような取り組みをお考えですか?
作業療法学専攻では、理学療法学専攻と同じく、在学中に論文を英語で執筆?投稿することや国際学会で発表することを目標にしています。すでに何名かの学生が集まり、英語の論文を読んでその内容を解釈したり、研究手法に英語を取り入れながら学んだりすることを始めています。作業療法学専攻の最終的かつ理想的なゴールとしては、本学と学部間連携を締結しているニュージーランドの大学で学習したり、そこの研究者とディスカッションをしたり学生交流をするなど、学会発表や研究活動を通じた国際交流です。また、教養学環の英語ネイティブ教員であるキャンベル先生の協力のもと、英単語のアプリケーションを活用して、日常的な英語のトレーニングを実施していきます。
言語聴覚学専攻は、今年4月に初の入学者が入ったところですから、大学に慣れてもらうことが第一で、言語聴覚士になるための勉強がどういうものかを十分に知ったうえで、徐々に「戦略的教育プログラム」を始めていく方がよいと考えています。もちろん、言語聴覚学専攻でも理学療法学専攻で実施しているような海外研修を、3年生あたり実現させたと思っています。まだ、英語教育プログラムには参加していませんが、3年生での海外研修で必要となる英語力をどのように養っていくか、この点については後期から具体的に検討していく予定です。ただ、軌道に乗るまでは、先ほど話した教養学環のキャンベル先生の協力を得て、英単語のアプリを使って取り組む方針です。
また、言語聴覚学専攻の本プログラム担当教員である生井友紀子教授が、オーストラリアの言語聴覚学会にアプローチしてくださり、現地での短期研修の足掛かりを得る努力を行っています。言語聴覚分野においてもオーストラリアは先進国です。日本語とは言語が異なるため、難しい面もあるとは思いますが、聞く能力、話す能力、嚥下機能など共通項はたくさんあるはずですから、お互いに参考にできることがあると考えています。
■今後の展望をお聞かせください。
理学療法学専攻では、来年度、3年生のオーストラリア短期研修を実現したいと考えています。留学における渡航費や宿泊費は、本学部が一部支援します。このプログラム期間中は、その支援を継続して、学生に海外で学ぶチャンスを与えたいと思っています。なぜ、私たちがこれほど英語や海外研修に力を入れたいかというと、私も斎藤先生も留学を経験しているからです。それは決して学生時代から高い志を持って、海外に留学したわけではなく、卒業後、勉強してキャリアを積んでいくなかで、やはりリハビリテーションの世界は英語がベースになっており、最先端の技術や知識は英語で発信されるということがわかったからです。学生にはそういうことに早く気づいて、取り組んでほしいと思っています。成果はすぐには出ませんが、今から種まきをして、いつかは花を咲かせてほしいという思いで取り組んでいます。
ちなみに、「戦略的教育プログラム」の第一期は、コロナ禍以前だった時期に1度だけ留学に行くことができました。今年3月に卒業した一期生の学生12名が留学できたのですが、今年の4年生は残念ながらコロナ禍で行けませんでした。留学を経験した学生に感想を聞くと、とても前向きな意見が多かったです。理学療法先進国のオーストラリアと日本を比べて、先進国はかなり進んでいることを肌で実感したと話していました。また現地では、本学部の学生より学年が1つ上の4年生の臨床実習を見学したのですが、彼らが患者さんと対面して治療している場面を見て、自分たちのたった1学年上とは思えないプロの理学療法士のような振る舞いに感銘を受けたようです。堂々としていて、患者さんへの対応や指導、評価するプロセス、問診など、とても流れがスムーズで、驚いたと言っていました。こういう刺激を受けられ、貴重な経験ができるわけですから、なるべくたくさんの学生を海外研修に連れていきたいですね。
■最後に受験生?高校生へのメッセージをお願いします。
よく「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、人間も同様で、若くて頭が柔軟で、色々なことを吸収できるうちに、特に素晴らしいものに触れてほしいですね。その経験は、生涯にわたって有益なものになるはずです。
グローバル化した地球において、世界は非常に身近な存在になっています。インターネットを通して、海外の人と通じ合うことは、もはや日常的です。高校生のみなさんがリハビリテーション分野の国家資格を取って羽ばたく頃には、さらに情報化社会が加速していることでしょう。その情報化社会の中で使われる言語の主流は英語です。ですから情報の最先端をキャッチして、情報化社会の中で生き延び、そこでリーダー的な役割を果たしていくには、語学力を身に付けることが非常に重要です。
今のところ、他大学の同種の学部学科で、私たち東京工科大学のような取り組みをしているところを私は知りません。逆に私たちの取り組みの評判を聞きつけて、外部の先生から質問されることは多々あります。みなさんが本学科に入れば、どの専攻であれ、「戦略的教育プログラム」を通してしっかり英語を身に付け、将来、活躍するセラピストになる可能性は非常に高いです。もちろん、それを実現するにはモチベーションが重要ですが、そのチャンスが与えられている大学であるということは、本学の魅力のひとつだと思います。
リハビリテーションの分野で海外研修というイメージはないかもしれませんが、この分野でも海外での学びを経験したいと思っている人や、そういうことに積極的に挑戦できる環境があるなら、チャレンジしてみたいと思う人は少なくないと思います。ぜひ本学でこのプログラムを活用し、大きく羽ばたいてください。
■医療保健学部リハビリテーション学科WEB:
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